怒鳴られる。
医者に怒鳴られたことがある。
その時わたしは高齢者の投薬を担っていた。
そして自分の服薬を忘れがちになっていたのだった。
W医者は「忘れただとー?!」という文脈で
こちらの話も聞かずにただ頭ごなしに怒った。
付き添ってくれた高齢者は医師が怒鳴る直前に
ピクピクと震えだしたところをはっきり見た、と言った。
医師には妹を介して今までのA病院のありかたと
つらかったアカシジアの話もした。
W医師はわかっていたのだ。
副作用もない完全な処方をしていたのにも関わらず
飲み忘れたわたしが悪かったのだ。
けれども頭ごなしに怒鳴られたショックは大きかった。
もうA病院に行くのはやめようかとさえ思った。
ところでわたしはその後、妹から
「今のお薬にね、血圧の薬も入ってたよ」
と言われてちょっとW医者の見方が変わった。
処方はさきほど述べたとおり完全だったのだ。
副作用は起きなかった。
A病院にとってわたしは問題ある患者だったと思う。
我儘を言う。処方どおりお薬を飲みたがらない、
またあるときはアカシジアにならないために
お薬をちょろまかす問題児だった筈だ。
やがてA病院に入院することになるのだが
時代ははっきり変わっていたのだった。
新薬は悪さをしない洗練されたものへと変わり、
副作用の起きる薬は時代遅れのものになっていた。
W医師に怒鳴られるほどのいけなさを
感じいったわたしは反省した。
A病院は進化したのだ。
診察の後で、受付で渡される予約表などの用紙類が多いことを
除けばはっきり進化した、と思う。