精神的な壁・ひらりと飛んで虹。

やはり心のことを書こうと思い直し。

伸ばして伝える指文字。

A病院の入院中に、まったく耳の聞こえない不自由なかたと仲良くなった。

そのかたと会話するには、てのひらやテーブルに指で書くという手段をとった。

答えは口がきけるそのかたから聞ける。

わたしは「それでね、背中が痒かったのーーー」と語尾を伸ばして伝えた。

たとえば「の」の字を伸ばして書いた。そんな些細なことがウケていらした。

その頃「苺ちゃんと会話できて嬉しい」と看護婦さんに伝えていたらしい。

 

数年後、他所の医院の待合室でそのかたと行き会った。

何年ぶりかの再会だった。

ヘルパーさんらしきひとと一緒だった。

ヘルパーさんは紙とペンを取り出して意思の疎通をはかっていた。

指文字で「お久しぶりです、懐かしいですね」と挨拶をすると

「苺ちゃんは元気だった?」と聞かれ「元気ですよー」と伸ばし文字で答えた。

口がきけることと耳が聞こえないことが彼女のなかで同居している。

 

ある日、まったく耳の聴こえない世界ってどんななの?

と質問したことがある。

「昔聞いた歌が何回も思い浮かぶの」脳内リピートである。

今は失念しているが、この現象にも名前がついている。

彼女は読書家だった。A病院の図書室でもよく借りに行っていたり

月刊カドカワなどの雑誌も講読していた。

言葉→心→身体→言葉…とループしてひとは生きていると思う。

 

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