Kさんとの出会い。
Kさんはとても腰の低いかただった。
「はじめまして。Kと申します、宜しくお願いいたします」を
フロアの全員に伝えて挨拶をしていた。
第二病棟にKさんが訪れたのはクリスマスイブの日だった。
状況が変わって家のひとにも連絡したくなったのだろう。
しきりに電話をかけて「どうしよう、誰も出ないよ」と
ちびまる子ちゃんの胃腸の悪い子みたいな顔つきで
(だんだんそんなふうに見えてくる)心配するのだった。
「今日はクリスマスイブだよ。お家のひとはどこか買い物にでも
行っているのかもしれないよ」「いや、誰か居る筈だ」
Kさんは譲らない。いつもの平日だったらそうかもしれない。
何回めかのやりとりで○時にKさんは自室に戻るよう言い渡されていた。
○時からKさんの自室は鍵がかかるのだ。
○時が近づいている。焦りが最高潮になったKさんは
やっと耳の穴がこちらに向かって開いたようだった。
「イブの日に家族皆で食事かもしれないな。
チクショー、粋なことしやがって」
急に言葉が乱れてますが息子を病院へ託したご家族は
ほっとしてお出かけしているのかもしれないし、わからないよねぇ。
わたしは苦笑しながら昼食に付いてたクリスマスツリー型の可愛い紙を
(「皆様の一日も早い回復をお祈りしています」のメッセージ付き)
手の中でつつみながら、
「今日はイブなんだよ」と繰り返した。
やっと落ち着いたKさん。お家への連絡は明日ゆっくりとね。
今日はありがとう、いっぱい話せてこちらも助かった。
「マンハッタンラブストーリー」が詳しい説明抜きで通じたのも
嬉しかったし、嵐のマツジュンを本当のファンなら「じゅんくーん」と
声をかけるのが望ましいという話を「それを知っている観音崎さんは
相当凄いね」いやーそれほどでも。
などなど四方山話を短い時間でやりとりできたねぇ。
わかる、わたしもこだわると不安が強くなって
周囲の声がただの気休めにしか思えなくなる性質だから。
じゃあ、また明日。バイバイ。