言われるがままへ、風穴。
「あなたらしくないことをしましたね」
慌てて設けられた診察の場で医師の第一声。
副作用の辛さが(他の患者さんの分も)一向に通じなかった抑圧が溜まり、
私は故意に病棟内で暴れた。
「私たちが心からのみたいと思う薬を出してください」
黙って聞いていた医師に伝わったかどうかはわからない。
ただその後に薬の内容が変わってそれまでかなり不自然な動作に固められていた
患者の苦しさが大幅に軽減されたようだ。歩き方が以前よりスムーズになっていた。
かなり増えていた体重も短期間で一気に数キロ減ったらしい。
彼女のあんな嬉しそうな表情が見られてよかった、と思う。
やりとりが一部でも成立するとそれまでの薬を受け容れる素地もできる。
言われるがままという壁に風穴をぶっすりと開けた思い出だ。