格子の窓越しに雪に踊る杉の木。
居場所を狭める。
そんなふうに扱われたら。
病棟にはいろいろな不安を抱えた患者仲間がいた。
自傷行為に走りがちな子がいてある時期の入院で親しくなった。
彼女と私の共通点は「詰め所に話しかけること」だった。
詰め所的には仕事が進まないので当然私たちはうるさがられていた。
病棟に問題児はいつでも何かしらの理由で居る。
それでも看護師たちは私たち二人に大概のことは完全無視だった。
彼女の自傷行為はずっと入り組んだ命の根源につながっていた。
幼い頃から「地獄は怖いところ」と刷り込まれてきたのだろうか。
根は素直でちょっと面白好きで踊りが好きで(ただし盆踊り系)
私より随分年上でいるのに私より幼く見える外見だった。
誰かと楽しく話していれば安定している彼女である。
それは誰でもおなじであろう。
ある時、私は詰め所に話が通じず度重なって無視されたことで
病室で泣いていた。彼女はやってきてしきりと話しかけてきた。
「もしかして慰めてくれてるの?」にゃー、と照れている彼女。
その入院では他に話が合うひともおらずつまらなかった。
詰め所から一番近い病室で豪雪があったある夜、
窓から鉄格子越しに雪を枝から振りまいて風に揺れる杉の木を見た。
まるで杉の木が暗闇の雪の中で静かに踊っているようだった。
夜じゅう私は見入っていた。
ばかげた運命は私をどこへ連れていくのだろう。
運命の輪郭をたびたび感情を害し邪魔されながらもたどっていた日々だった。