字を書く辛さ。
ノートに丸い字で詩のような甘い言葉や
文章を書きつらねるのがこよなく好きだった10代の私は
初の入院で襲われた書痙にもまた深く深くまいってしまった。
病棟に振り込まれた小遣い銭でノートを買い求め
字を書くたびに降りてくる憂鬱もとびきり重たかった。
いつかの患者仲間があの頃の私と同じような震えた不安定な文字を書き、
葉書で外部と連絡をとろうとしていた。それを見た私はおそるおそる聞いてみた。
「この字でいいの?」 彼女は「いいの、いいの」と笑っていた。
アカシジアとおなじく字の震えを訴えても
医師たちからは「気のせい」扱いをされてきた。
いま現在も書痙の影響があるかどうかわからないが
ここ10年内外に私のきょうだいが私の手書きの文字を見て驚いていたことがある。
「苺ちゃんはこんな字だったっけ? 嘘でしょう」
デジタルに移行して書き文字の機会が少なくなったとはいえ、
自分の中でも書痙ショックはまだまだ尾を引いている、と思う。