田んぼに蛙。あの夜みた風景。
最初に言おう。布団ひと組みをダメにした。
2回めの隔離状態(保護室送り・他者を著しく惑わせるため)のある夜のこと。
わたしは田んぼにいた。夢じゃない。トイレットペーパーで「ばってん」を
入れなくては、と必死だった。そうこうしているうちに巡回のナースが来る。
「何やってるの???」わたしの動きは「きゃっ!」吃驚して止まった。
田んぼで泥だらけで蛙も居た。翌日思い出し「A先生ってもしかして
早稲田出身!?」と看護師さんに聞いた。答えはYES。
看護師さんは後に「観音崎さんは妙に辻褄が合うんだよなー」と不思議がっていた。
ただの偶然なのだが。
A先生は当時北海道から飛行機で出勤なさっていた。
夫とも話した。「これから薬を増やします」と先生。夫は「偏った印象は
あっても手ごたえを感じた」という所感を抱いたらしい。
かくてA先生の七色のお薬処方は現在の3倍の量に決まった。
わたしはその年の3月に退院を果たした。
入院時の書類に「目安として入院期間は3ヶ月」を少し超えたあたりに退院は叶った。
保護室で見た田んぼに蛙の幻覚は今でも鮮明である。
夜、布団に入って泣いて泣いて過ごした頃のこと。
ある日、夫と恩師が面会に来た。夫は「数年前に一緒に来た国立の病院だよね?」
と後に確かめてきた。わたしは「そうだよ。帰りに祝砲鳴らしたあの病院だよ」
苦しかった、やはり国立にはいい思い出が少ない。