そのイヤフォン。
わたしは外出時にイヤフォンを付けない。
周囲に不注意となるのも避けたいし、耳がイヤフォンで痛くなるのもきらい。
そんなわたしでもi-podの良さは知っている。
わたし好みの曲がランダムに出てくる幸福を知っていてハマらなかった。
東京へ来てから曲を全部失くしたときもショックは尾を引かなかった。
逆にサバサバした気持ちになった。一度に2000曲聴けるわけじゃあ
なかったものね。
歌はともだち。
何回目かの入院時にわたしは「人間ジュークボックス」として
知り合いになった子たちと遊んだ。
適当にタイトルを言ってもらい(邦楽・アイドル系に限るが)
だいたいは歌えた。
のちにカラオケに移行して歌詞本のどこをひらいても
演歌含む邦楽は何かしら歌えるようになっていた。
「歌ってばかりではダメ!」職人気質のおじいちゃんが
そんなふうに怒っていたが、わたしはどこ吹く風だった。
そのイヤフォン。あなたの歴史がつまっているイヤフォン。
公園ですれ違う人々が耳にしていると音楽か語学か知らないけれど、
大切にしている履歴を感じてこころはあとずさってしまう。