血圧のお薬を飲むまで。
アカシジアがはっきり出たのは16歳の頃。
まだほんの子供で初めて親元離れた入院生活で何のどんなお薬を
飲んでいるのかもわからない30年ほど前の話である。
お薬手帳もないすべては闇の中でとり行われているような気さえした。
医者は古いタイプの口が重いひとだった。
職員たちから「ヤブ医者だ」と陰口を叩かれていた。
こんな女性患者がいた。
入院時はキレイなひとだったのに次第に見る影も無い太った体形になり
副作用で歩き方まで奇妙だった。
最初に歩き出すまでにちょこちょこと助走が必要で
だからなのか手にしたものを持っていくのが面倒なのか
水銀の体温計をベンチに放り投げる癖があった。
当然体温計は割れて壊れる。
そのことにさえ気がまわらない表情をしていた。
彼女は院外作業で昼のお薬をトイレに捨てていたらしい。
「わたしたちが飲みたいと思う薬を出してください」
機会がありわたしはそれだけはヤブ医師に伝えた。
その後、彼女は薬が変わったのかお風呂あがりに
「4キロ減った」と顔を輝かせて報告していた。
わたしたちが飲みたいと思う薬。彼女のぶんだけでも変わってよかった。
薬イコール副作用。
この図式は長いあいだ消えなかった。
高血圧で小さなころから診断されていたにも関わらず
お薬を拒否していた自分。
昭和のクラシックな薬ではなく平成の今の
副作用が出にくい処方があるなんて吃驚した。
今では脳外科からもお薬をもらっている。
脈拍まで異様に高いタイプだったのに
それも治していただいた。
精神科、そして脳外科。納得ずくで服薬している。