動けるひと。
リハビリについて彼から聞いた。
脳に新しい回路を築くことなんだそうだ。
「あの頃、八宝菜がレシピなしにつくれたんだったわ」
の時に戻るのじゃなくて、八宝菜をこれからさらに美味しく
つくりあげるわたしになっていくための回路を脳に刻むのだ。
なるほど。
できなくなったのも何かの縁。だけど手足が動かないわけではない。
右手も左手もある。両足もある。
銀の義足の彼女はどんなにか苦労を重ねてお洒落して街を歩き
さまざまなひとの心を動かしただろう。
彼女は動けるひとなのだ。
精神的に動けるひとなのだ。
入院先でたった3年で動けなくなったかたがいた。
看護婦さんの話を聞くと「甘えているのよ」の一言だった。
同室になると「観音崎さん、詰め所に言ってきてくれない」
とわたしを使う。
ちゃんと動いたらナースコールだってしっかり押せるのに、だ。
この違いはなんだろう。
彼女らのやる気の量か。
わたしは今その中間にいる。
八宝菜プロジェクト(命名・彼)は始まったばかり。
まずは握力を鍛えよう。
動画を流しながらぎゅむぎゅむのボールを握って鍛えよう。おー。