まるで一度も怒ったことのないかのような私について(2)
転換点は自身で感じとってから始めていくのだと思う。
理論武装で生きてきた人も、コツコツ実直な半生のひとも
どの分野で活躍し働いてきても最後に到達する愛という高い部分に
僅かでも触れると電光石火で幸福な雪崩の変容が起きる。
これまで医師や看護師にもさまざまなタイプが居て
すべての方々に怒られたわけではないが、
各人のやりかたに触れていくと「人間なんだよなあ」
「間違いも誤解も起きる」一瞬でも何故か最もらしく大らかな気持ちになった。
怒りは人間で生まれてきたからには自身で昇華・消化するもので
それをやり終えたからといってその人が特段優れているのでもなく
だからこそ怒りのテーマが人生の中に巧みに織り込まれているのだと思う。
「まるで一度も怒ったことがないみたい」と夫が言い表す私は
変容の道を少しかじった程度なのかも知れずまだまだ危なっかしいのだろう。
閉鎖病棟で患者仲間に誤解を受け発作的にぶたれた経験。
偏った怒りをぶつけられたこと。
あの時、受けた恐怖でめったに起こさない貧血になった私は
怒りの破壊力を思い返す。私の変容をうながす大きなピースとなった出来事だった。