口ずさむ、歌。
自分にあるものが自分を蝕んでいった。
病に出るほど自分が追い詰めていった。
学校へ行けなくなった14歳の私に今なんて声をかけよう。
「怖いことはみんな幻だよ」
50近い私に説得力はあるかどうか知らないけれど、
脅威に思えたものは自分が固め尽くしてつくりあげた幻だ。
薄暗いなら照らしにいけ。
人間の心ひとつが壊すことも大きかったけれど、出来ることだって大きい。
閉鎖病棟でも保護室でも、お前、歌を大きな声で歌っていたじゃないか。
ある日うるさく感じた祖父が言う。「歌ってばかりでもダメ」
じゃあ歌ってばかりではダメな世界でおじいちゃんはどんな豊かを掴んだの?
私のカラオケを楽しむ様子をだいすきなひとはうんと褒めてくれたよ。
ダメでバカで世間体の悪い娘で孫だった私は今とてもしあわせな場所にいるよ。
あの頃、家族の愛を感じられずに篭城して病まで広げてた。
自分が自分を照らせるのは、口ずさむ歌だった。
大きな声で歌える人生を私、愛してるんだ。