答え・芯からワクワク
その精神科病棟では寝具のカバーを自分たちで入れ替えていた。
週に一度のリネン交換では病棟内にはさまざまな感情が交錯する。
入所者には向き不向きなどにより3種類の人々に大別されていた。
1・外したリネンを使用前のように美麗にたたむ神業的な才能の持ち主
2・リネンを布団にセットする感覚がどうしてもわからないできない億劫だ、
と諦めてリネン交換の時間がただ憂鬱でたまらないひと
3・淡々とリネン交換を消化していくひと
1度目の入院時には私は2に該当した。2回目以降は3のひとになれた。
ものすごく意識して1になりたかったが願望はまだ願望のままだ。
リネン交換というのは出来る・出来ないがはっきり分かれて
入所者の葛藤のおきやすいルーティンワークだった。
コツさえつかめば2のひとはまたたく間に3のひとになれる。
2のひとの資質によっては3までに大きな憂鬱な溝を感じやすいものだが。
看護師さんは入院時にリネン交換のテクニックを説明したりはしない。
ある意味誰もが出来ることを前提に接している。
それは大いにまともなことではあると思うが、んー、なんだかなあ。
患者有志で「リネン交換をスムーズにやってみよう会」を発足するべきだったかなあ、と今では思う。コツを図解にしてホールの壁に掲示するとか。要はあかるい気持ちで取り組めて布団を清潔に保てる歓びに尽きると思うのだ。
人間は創意工夫が楽しいものだ。
そうか。皆さんがあかるく立ち上がるためのレッスンのひとつなのだろう。
心躍る方向でいいんだね。心躍る方向がいいんだよね。人生はワクワクなのだ。